吉川です。


 これまで何回かゴルフというゲームやゴルフスイングに関する「不思議」な現象、症状について説明してきました。多くの場合、というかほとんどの場合これらは大脳とのかかわりで説明できることも説明してきました。これには論理的な背景があり誰でも納得のいく「わけのわかった」説明ができます。私がゴルフと大脳とのかかわりに興味を持ったのは、必然的にわが身に起こった症状と偶然出会った一冊の本によってでした。


 話は
34年前に遡ります。当時私はまさに上達の途上にいてベストスコア68 を叩きだし、所属していたクラブの公式競技にぶっちぎりで優勝し、クラブ対抗戦の選手にも選ばれまさに破竹の勢いでした。

しかし事件はある日突然起こったのです。ある朝いつものように近くの練習場に行っていつも通りの練習を始めました。当時から私は短いクラブ(
SW)から10球ずつ打っていくのが練習のルーティーンでした。9 アイアンまで来たとき異変が起こったのです。いつもなら135ヤードがターゲットでしたがいくら打っても110 ヤードにやっと届くショットばかり。それどころかボールは右へ左へ曲がりチョロ、シャンクまで出始めたのです。クラブの番手を変えても同じです。4 アイアンでも140ヤード行けばいい方でとにかく真っ直ぐ飛びません。結局その日は練習を途中で切り上げました。

  こんなことは全く初めてなので「こんな変なことは一晩寝れば元に戻っているさ」とタカをくくっていたのです。ところがそのあと練習を始めると全く同じ症状が出て何をやってもうまくいかず、ついにはドライバーまでもが
150 ヤードしかキャリーしなくなり、調子はどん底状態になりました。半年ほどその状態でコースに出てもまともに回れるわけがなく、状態は悪化し本当にもうゴルフはやめようと思っていました。


 ある日街を歩いていてふと有名な書店を通りかかった時、なんとなく店に引き寄せられて入って行き、趣味のコーナーの書架の前に行きました。その時まず目に留まったのが「ゴルフの大脳生理学 松枝
張(ひらく)著」で、私は迷うことなく手に取ってページを開いていました。その時衝撃的な文章が目に飛び込んできたのです。「ボールは見るな!」その本を買って帰り一気に読み下しました。その日の衝撃はいまだに覚えています。


 著者曰く、ゴルフスイング中にボールを見ても何の意味もない、ダウンスイングではボールはもはやアドレスの時の自分との位置関係にはない、打てという意思が筋肉の動きになる前にすでにインパクトは過ぎている。つまり
100%のプレーヤーは幻の球を打っているのだ、という衝撃的な内容です。そしてその幻の球を打つ練習法まで説明がありました。


 私はワラをも掴む気持ちでその練習法にのめりこみました。もう失うものは何もない、そうです当時は全くその心境でした。一か月間は一球もボールを打たず幻の球が打てるという確信が持てるまでただひたすら練習をしました。そしてこれで間違いなく「打てる!」と確信をもってある日勇気をもって
7 アイアンでボールを打ちました。打球は夢にまで見た完ぺきなドローボルで160ヤードキャリーしたのです。大スランプに陥ってから7 か月目のことでした。まさにこの本の一言で私は救われたのです。


 後日スランプは必然的であったことを大脳とのかかわりで自分で検証できましたし、この本との出会いは大いなる偶然であったと思っています。以後
30数年間私はスイング中にボールを見たことがありません。残念ながらこの本は絶版となりもう古書でしか手に入れることはできません。私は自分をどん底から救ってくれた一冊の名著としてこの本を手放すことはないでしょう。今自分のゴルフの原点にかえるべく本書を読み返しています。

39.原点にかえる